『ロード・オブ・ザ・リング』 矢を拾うレゴラス

 『ロード・オブ・ザ・リング』(旅の仲間)を今更ながら鑑賞。

 大ヒットして、批評家からも評価の高い作品だからハズレなし、とか考えてると、みんな大好き『ダークナイト』(バットマンシリーズ)が個人的にまったく受け付けなかったので、好みには偏よりがあるかもしれない。

 で、LotRはどうだったかといえば、娯楽作品としては及第点で、それ以上でも以下でもなし。もっとも三部作を観終えてからでないと評価できませんが。

 観ていて気になったのは、モルドールを目指す旅の一行がろくに荷物を持ってないこと。自分だって二泊三日の旅行でも、もうちょい大きなカバン持っていきますよ。ましてホビットたちは「朝食を二回、夕食も二回する」習慣があると言って、再三、煮炊きする場面も出てくる、となれば登山家くらいのバックパックを背負っててもいいんじゃないかと。

 この問題は以前、アニメ『ロードス島戦記』を観たときにも気になってて、やはり同じように宿場もないような荒野を何日も旅するのに、ろくに荷物を持っていない。そのくせ重そうな鎧や長剣を昼夜常備したまま歩いている。そのへんの不自然は「まあニッポンのアニメだし」くらいに考えてたんですが、実写のハリウッド映画でも(少なくともLotRでは)同じだったのは残念。アラゴルン、ボロミアなんかも剣や盾は立派なのを持ってるし、弓の名手・レゴラスにいたっては、場面が変わるといつのまにか矢が補充されてる問題もあり。

 劇中こういう部分がひっかかってしまうと、いわゆる興醒めというのか、作品が楽しめなくなってしまうのはやっかいな性格ですが。よく言われてるように、映画やアニメの物語世界って、魔法が出てくるとか、ロボット兵器が出てくるとかの時点で、もとより我々が生きてる世界とは違うので、「現実世界であり得る」とか「現実世界に則している」必要はなく、そういった意味の「現実性」を欲してるんじゃないです。

 ただ、その物語世界の中での「説得力」や「整合性」みたいのを持たせることがだいじだと言いたいわけ。たとえば、冒険者の荷物問題を一例にするなら、『ドラゴンボール』に登場する「仙豆」のように、ひと粒で数日分のエネルギーになる豆を持ってるから食糧を携行しないで済むとか、それこそポイポイカプセルのような荷物を圧縮するテクノロジーがある、とかなんでもいい。そういう裏打ちがあれば、冒険者の荷物が少ないというのにも得心がいく。

 もちろん、LotRにはトールキンの原作があるので、こういう設定付けで逃げられないでしょうから、やっぱり冒険者たちにはがっつり大きな荷物を背負わせたほうが説得力もあって、私を満足させられたんじゃないかと思う次第。あとレゴラスくんには、休憩中に地道に矢をこしらえてるところとか、敵が放った矢をこまめに拾い集める場面を入れておけば、矢が補充される謎も解消されてすっきり。