『戦火の馬』
観てから間が空いて書くと、どんな作品だったか記憶が薄れてしまってよくないですね。いつごろ観たのかの記録にもならないし。
で、この映画、「馬視点で描かれるという特異な物語」だ、と耳にしていたのですが、ふつうに人間が主役の作品です。別にそこは善し悪しじゃないですが、動物の主観で、ということなら他にももっと確実に動物視点での映画はあったと思うので、そこは本作の特徴ではないです。それと動物主観と言っても「ぼくはジョーイ。何歳の馬です。飼い主様の名前は…」みたいな擬人化?もありません。
この作品が「馬の視点で」と紹介されることがあるのは、一頭の馬を軸に、その飼い主・持ち主である人間がどんどん流れて入れ代わってゆくからでしょう。それならそれで、幾多の人手を渡り渡って、育ててくれた少年といつかの再会を願いつつも、結局、果たせず終わる、というのも味があったかもしれません。
物語は、主役となる馬のジョーイが競売され、少年の家に引き取られるところから始まります。そして数年後、ジョーイがまた競売にかけられ、少し成長した少年がそれを落札しようとする、終始が対称になったきれいな構成です。個人的には、この競売のところで物語を終わりにしても印象的でよかったかなと。
スピルバーグ監督の戦争映画といえば、血肉が飛び散る『プライベート・ライアン』がありましたが、一方こちら『戦火の馬』は、機関銃で乱射されても血しぶきひとつ出ないので、そこは安心して観られます。流血の描写があるとレーティングにひっかかるからでしょうね。
"War Horse"(2011年 監督:スティーヴン・スピルバーグ)