川端康成のパンケーキ

台湾では何かと「日式」の二文字(和風の意味)を頭に付けたがる。
「日式拉麺」なんかは、ああいうラーメンは日本特有なので妥当な呼称だけど、「日式火鍋」みたいに日本食でないものにも付いてることも多い。

日本留学経験のある友人がカフェを経営しているのだけど、先日そこに遊びにいったとき、「日式鬆餅」なるものを食べてみるか、とすすめられた。「鬆餅」はワッフルやパンケーキのこと。比利時(ベルギー)ワッフルなら有名だけど、「日本式パンケーキ(ホットケーキ)」なんて聞いたことがない、というか和菓子じゃないでしょう。

友人曰く「川端康成が愛した店のパンケーキのレシピに則して作った」とのこと。「和式パンケーキ」というと怪しげな感じだったけど、「文豪・川端康成が愛したパンケーキ」と呼ぶと由来も信憑性があって、ストーリーも想起できる素晴らしい名前だ。

なんでもないごく普通の商品でも、それらしい謂れや故事を付加すると奥行きがでておもしろい。こういうのもブランディングというのでしょうか。あまり実を伴わない名前だけでは困るけれど。

あとで調べたところ、川端康成が通ったのは、鎌倉にある「イワタ珈琲店」で、いまでも川端康成が愛したホットケーキはいまもメニューにあるらしい。写真を見ると、見た目は友人が焼いてくれた「日式鬆餅」と同じだった。