『ミリオンダラー・ベイビー』

 30歳を過ぎてからプロボクサーを目指すマギー(ヒラリー・スワンク)は、イーストウッド演じる老トレーナーによってその才能を開花させ、ついにチャンピオンへと駆け上がる。そんなある日、彼女のもとへ欧州からきたと名乗る使者が訪れる。実はマギーは、とある小国の王侯の血筋であり、幼い頃に養子に出されたものの、候位継承順の問題で呼び戻されることになったのである。貧しい労働者階級で育ったマギーの人生は一転し、急遽、上流階級で生きていくための礼儀作法を身につけることに…

 というあらすじは、私がでたらめに書いた与太ですが、構造としては大差ないです。こんな展開の物語を見せられた人は、腹を立てるか飽きれるか、そうでなくても荒唐無稽なおとぎ話の類いだと思うでしょう。『ミリオンダラー・ベイビー』はそんな映画です。物語にはそれなりの脈絡というか、作り手と受け手の間で約束ごとを積み上げていく作業があって、「観客を裏切る」にしても基調ごと覆したらついていきませんって。

 視聴前に目に入ったレビューで「後味が悪い」と書かれていたのが散見されたので、私が予想したのは…

 1、無難なマッチメークしかしてくれない老トレーナーと仲違いしたマギーは、悪名高いプロモータのもとへ移籍してチャンピオンになるも、その後の過密な試合スケジュールでまもなく身体を壊し、短い選手生命を終える。

 2、順調に勝ちを重ねたマギーはついに王者に挑戦するものの、直前の練習でケガをしてしまい、試合は惨敗する。その後、故障が慢性化したマギーは試合で勝てなくなり、自暴自棄となって生活も荒んでいく。

 「後味が悪い」結末っても、せいぜいこんなものかなと予想してたのですけどね。 

 "Million Dollar Baby"(2004年 監督:クリント・イーストウッド